脳と精神疾患との関係

近年、いわゆる「心の病」といわれる精神疾患を患う人が増えています。
一説では、心というものは脳以外の部分に存在すると言っている研究者もいるようですが、人間は脳で物事を考えて行動している以上、脳に何らかのトラブルが起こったことで精神疾患になってしまうと考える方が自然です。
脳の研究が進むにつれて、様々な精神疾患の原因が明らかになりつつあります。

精神疾患の症状

考え事

精神疾患を患う人が増えていると言いましたが、では実際にどれくらい人数が増加しているのでしょうか。

最近、テレビのCMでも盛んに喧伝されているうつ病を例に取りますと、1984年には約10万人だったものが、1994年には約20万人、1998年には40万人以上と急激に増えています。この傾向は近年も衰えることはなく、100万人以上の患者が存在するとも言われています。

うつ病になる原因がわかったことでそのように診断される患者数が増えたということもあるでしょうが、この増加数はちょっと尋常ではありません。

精神疾患の原因

精神疾患を患ってしまう原因は様々なものがあり、一概にこれが理由だと決めることはできませんが、少なくとも人間の脳の中でどのような変化が起こっているのかは徐々に解明されつつあります。

脳の構造や機能、仕組みなどがわかったことによって、正常な脳の状態、異常な脳の状態の違いもわかってきています。

精神疾患のかつての治療法

かつて、脳の具体的な仕組みがわかっていなかった頃は、患者の治療法は非常に問題のある方法が採用されていました。

ロボトミー

メス・ハサミ

例えば、統合失調症のような精神に異常をきたしてしまったとき、人間の感情に問題があり、その感情を前頭葉が制御していることはわかっていても、有効な治療法まではわかっていませんでした。

そのため、治療は問題のある脳の前頭葉を物理的に取り除くという手法が行われていたのです。これが今では悪名高き「ロボトミー」です。

しかしながら、他に有効な治療法が存在しなかった当時は画期的な治療法として各地でロボトミーが行われていました。しかも、このロボトミー発案者であるモリス氏はこの功績によりノーベル医学賞を受賞しているくらいです。

ロボトミーの問題指摘と禁止

ロボトミーは、実際に統合失調症患者の治療法として効果が認められていたため、かつては日本でも行われていたくらいです。しかし、脳の前頭葉を切除するという問題のある手法だったこともあり、成功する例もあれば失敗する例もあるなど、その効果には疑問が投げかけられていきます。

効果がある人間にはよくても、失敗した人には人格喪失などの重大な副作用が出ることもあり、最悪の場合にはそのまま命を落としてしまったケースもあったのです。そして、その後精神疾患に対して効果のある薬が発見・制作されるようになって問題の多いロボトミーは1970年頃からは行われなくなりました。

現在はロボトミーを用いた治療は禁止されています。なお、余談ですが、ロボトミーの「ロボ」とはロボットのロボではなく、脳の前頭葉を示す「ロボ」です。

「ロボトミーを受ける」→「人格喪失する」→「感情がなくなる」→ 「ロボットみたいになる」ことからロボはロボットのことだと誤解している人も多いようですが、実際は違います。

精神疾患の現在の治療法

脳断面図

現在では、患者の脳の中がどのように変化したかがある程度わかるようになりましたから、その治療法は脳で起こった変化を通常時に戻してあげる方法が採用されています。

精神疾患は、その病気によって脳の異常部位も異なりますし、その変化も異なっていますから、各疾患に応じて適切な治療を受けることが必要です。現在は原因が判明したことで薬物治療が行われるようになりました。それと同時に、精神疾患とストレスなどの関係も判明しつつあり、薬物治療と精神治療(カウンセリング)、この両方を平行して進めることによって多くの患者が治療できるようになりました。

かつてはロボトミーのような方法を使わないと社会復帰が見込めないものでしたが、現在の進歩した治療法により多くの人が病から立ち直ることが可能になりました。

それでは、具体的にどのようなことがわかってきたのかを、最近話題に上ることが多くなった精神疾患と脳の関係、そしてその治療法から考察していきましょう。


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